悪妻輪舞曲(4) 「もっと喋りたかったなぁ」

「あぁ 私寝ちゃってたんだ」
「えっ うん」
「起こしてよ~」
「あっ 気持ちよさそうに寝てたし」
「もう帰る時間じゃない」
「うん じゃ 私帰るね」
「もっと喋りたかったなぁ」
「明日学校で」
「うん」

何もなかったように私は帰った

どんな感情かいまだにわからないが
帰り道はずっと涙が止まらなかった

ヒロコにそれを伝えたのは
アキラさんの争奪戦の最終盤だった
実はヒロコも同じ会社に勤めていて
同じようにアキラさんを狙っていたのだ

正直もうヒロコに負けそうだった
顔も体も勝ち目がなかった
まるで外国人のようなグラマーな体で
彫りの深い顔 化粧をするとモデルそのものだ
私も化粧で清楚系をきどっていたが
どうしてもヒロコの魅力には勝てないのだ

もちろんその時は親友じゃなく
ただの恋のライバルだった

「ヒロコ 今日ちょっと話しよう」
「何よ アキラさんのことなら
正々堂々と戦うって決めたでしょ」
「いいから」

一生話すつもりはなかったが
どうしてもこの争奪戦に勝ちたかった

いつもは爆音の流れるクラブだが
その日はアートイベントだったので
2階はちょうどいい騒々しさだった

大きなソファに2人で座り
カクテルで乾杯した

「マドカ 白旗でしょ」
「まさか」
「早く普通の友達に戻りたいんだけど」
「じゃあヒロコがあきらめて」
「それは無理 あとひと押しなんだから」

呼び出したものの言おうかどうか
まだ迷っていた

「あのさ・・・」
「うん 何?」
「どうしよっかなぁ」
「何よ マドカらしくないじゃない
アキラさん以外のことなら普通に相談に乗るよ」

ヒロコはあいかわらずだ
悪気なんかない ただ正直なのだ
アキラさんを好きになったのも
私の話を聞いているうちに好きになったと
正直に打ち明けてくれた

「えっとね 私 卑怯なんだけどさ
どうしてもアキラさんと結婚したくて」
「だからそれはダメだって」
「じゃあ 言うしかないか」
「何を?」
「ずっと黙ってたんだけどさ・・・」

私はおじさんとのことを赤裸々に告白した
するとヒロコは怒りに震え
黙って店を飛び出していった

すでにヒロコはひとり暮らしをしていた
それはおじさんが彼女と同棲をはじめたからだ

部屋に乗り込んでおじさんを
その彼女のいる前で問い正したらしい
本当だとわかると怒鳴り散らして
縁を切ると言い放ち私に連絡してきた

家の近くの公園で待ち合わせると
ヒロコは表情をなくしていた

「マドカ・・・私 本当に知らなくて・・・」
「黙ってたんだから当然よ」
「こんなことで許してもらえないかも
しれないけどアキラさんからは手を引くわ」

私は後ろめたかったがホッとした

「あとね・・・」

ヒロコは泣きながら私に訴えた

「もうあの人とは縁を切るから・・・
これからも・・・」

私ももらい泣きし2人で抱き合った

「ヒロコがそばにいないとつまんないよ」
「エヘヘッ」
「今日で忘れていいから」
「ありがとう マドカ」

次の年 私は結婚した

ヒロコももちろん祝福してくれた
夫はもしかしたらヒロコと
結婚したかったかもしれないが
本音を話してくれるはずがない

ヒロコは私には申し訳なさそうにしてたが
男関係は荒れに荒れた
おじさんのような男を陥れるように
誘惑しては捨てていったのだ

ただそのひとり 店の客の夫との不倫が
会社にバレてクビになった
クビと言っても会社的にマズいので
自主退職という形で会社を去った

その後保険の外交員になり
今も続けている

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